オーストラリアでの解雇方法
2014年1月5日
NICHIGO PRESS 1月号 労働・雇用法弁護士 勝田順子の職場にまつわる法律の話
第5回 オーストラリアでの解雇方法
「豪州での解雇は難しい」と考える経営者の方も多くいますが、実際はどうなのでしょうか?合法的に、かつ、迅速に解雇するために、どうすればいいのか、今月から数回にわたり順を追って説明していきます。
まずは、解雇の種類を理解しましょう。大別して3つあります。略式解雇、(通常)解雇、整理解雇です。
1.略式解雇(summary dismissal)
従業員側に“serious misconduct”と言える重大な違法・不正行為や雇用主に対する忠誠義務への違反があった時、これは従業員側の雇用契約違反となり、雇用者は一定期間の通知を出さずとも即日その従業員を解雇できます。
例えば、従業員による売上金の窃盗、顧客リストの売却、勤務中の副職などがこれにあたります。このような事例では、その従業員の不正行為の背景や職種、職場環境にかかわらず、serious misconductに値すると判例が確立されています。
また、判例に頼らずとも、雇用契約書や就業規則で会社が何をserious misconductと考えるのかを事前に示しておくことで、それらに該当する行為があった時に迅速な解雇に踏み切れます。反対にそれらの十分な記載がない場合は、従業員の問題行為をserious misconductと断言して解雇をするには常に不当解雇のリスクを伴います。
次のような行為も一概にserious misconductとは言えません。
•無断欠勤があった
•薬物使用の影響下で出勤してくる
•上司や同僚に暴言を吐いた
•虚偽の業務報告をした
•バスドライバーが運転中に携帯を使用した
上記のような従業員がいる場合、どのように対応したいと考えますか?雇用の際、方針を雇用契約書や就業規則に明記して従業員に告知しておくことが一番の対策です。
2.(通常)解雇
雇用契約で定められた期間の通知を出して解雇する方法です。通知する際には下記3点も同時に行ってください。
• その理由を解雇される従業員に説明すること
• 解雇の理由によっては、その理由について釈明する機会を従業員に与えること。例えば、セクハラなどでは被害を受けたとされる側だけの話を基に解雇してはいけません
• 解雇の理由が勤務態度や作業能力にある場合は、その能力が要求されるレベルに達していないことを解雇通知の前に警告すること。つまり、勤務態度を改め作業能力を伸ばすために妥当な機会と時間を与えること
3点目の作業能力への警告については、よく「2回警告を与えて3回目で解雇できる」「警告を与えてから1カ月待たなくてはならない」などというルールがあると考える人がいますが、決められた回数や期間というものは、実は存在しません。
妥当な警告回数や期間は、個々の事案によって異なります。例えば、遅刻は本人の意思次第ですぐに改善されるべきものですが、ある技能が足りないのであれば、それを習得する期間を与える必要があります。ちなみに、6カ月未満の試用期間中は警告を与える必要はありません。契約に基づいて通知することで解雇できます。
3.整理解雇
今まで社内で行っていた仕事が今後必要なくなる場合は、その仕事を行っていた従業員を整理解雇することができます。一般的には次のような場合に整理解雇が行われます。
• ビジネス自体の終了
• 新しいテクノロジーの導入
• ビジネスの運営体制の変更
• 業務のアウトソーシング
• 企業買収
また、整理解雇する際には、次の点に気を付けてください。
• ほかのポジションで雇用の継続が可能か検討すること
• 法律で定められた期間の通知を出すこと
• 解雇手当や休暇手当など、各種手当てを支払うこと
• 株を買い取る権利やボーナスなど、給与には反映されていない賞与を支払うこと
次回は法律で禁止されている解雇(違法解雇、違約解雇、不当解雇)についてご説明します。
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